和白干潟の生態系


▲潮が満ちている時は 「海のすがた」                                 ▲ 潮が引いている時は「陸のすがた」


いのちのつながり

干潟には、多様な生き物が生息しています。目に見えないような細菌や植物、泥の底で暮らす底生生物たち。魚、鳥、そして人間。この多くの命のつながりが干潟を支えています。

例えば、シギチドリ類は、潮が引いている時にカニやゴカイなどを餌を獲ります。陸ガモ類はアオサなどの海藻を食べています。海ガモ類やカイツブリ類は海に潜って貝や小魚等を食べています。アサリは海水中の有機物を濾過して食べます。



干潟は自然の浄化槽

 

干潟は河川から流れ込んでくる汚れ(有機物)を多様な食物連鎖によって浄化します。
有機物が分解されたり運び出されたりして水をきれいに《浄化》する仕組みです。
干潟はたくさんの生き物たちによって支えられた「自然の浄化槽」なのです。

森や住空間から出て来る有機物(一般的に“汚れ”といわれる枯葉や生物の死骸など)が河川に運ばれて干潟に入ります。有機物は干潟でバクテリアや、カニやゴカイ、貝類など底生生物の「餌(栄養)」となります。底生生物は魚類や鳥類の餌となります。また魚は人によって獲られて(漁業)、食卓にならびます。渡り鳥は間接的に干潟から有機物を運び出してくれます。
これらの食物連鎖が干潟の泥や水の浄化の手助けをしてくれます。


浅い海は海のゆりかご

 

波が穏やかなで、上流から豊富な栄養が流れ込む浅海域の藻場は、魚類などの産卵、生育に適した場所になります。
ちいさな命が育つ場所なので「海のゆりかご」と呼ばれます。

干潟は波の穏やかな内湾にできます。 浅い海は日光が届くので植物(海藻、海草)が育ちます。 アマモ場や藻場は魚介類の産卵の場になります。 産まれた小さな魚介類は、静かな波と豊富な栄養に育てられて大きく成長し、やがて外海へ出て行きます。
大昔の暮しでは、潮が引いた時にたくさん獲れる貝をよく食べていました「貝塚」。また潮の干満を利用して「塩」を作っていました。 現在は、海苔の養殖も盛んに行われています。


干潟は渡り鳥の飛来地

 

干潟には渡り鳥のえさになる生き物がたくさんいます。 水辺の渡り鳥にとって、干潟はガソリンスタンドの役目をしています。

 

渡り鳥は、主に地球を南北に縦断しています。この図の水色のラインは、東アジアのシギ・チドリ類の主要な渡りルートです。
ガン・カモ類やツル類など、鳥の種類によって繁殖地や越冬地は違いますが、一般に中国北部やロシア、アラスカなど北の地域で繁殖(主に春・初夏)して、オーストラリアやニュージーランドなど南の地域で越冬します。
渡り鳥は毎年このルートを往復します。シギ・チドリ類では約1万kmも移動する個体もいます。
博多湾は、中継地や越冬地として多くの渡り鳥が利用しています。
繁殖地や越冬地、中継地のどこか一ヶ所でも環境が悪化すると、この“命の渡り”ができなくなります。